濃いブルーの夜

My Favorite Blue.

母さん、オレは

LOSTAGEというバンドについて

2001年から地元奈良を拠点に活動を続ける3ピースロックバンド。来年で結成20年を迎える。私がこのバンドを知ったのは大体2008年頃。活動期間の半分以上を見ていることになるのか。10代後半という多感な時期に出会って以来、私の人格形成にかなり大きく関わっている。正直、人生で最も執着している存在と言っても過言でない。
彼らに対してはあまりにもクソデカ感情と呼ばざるを得ないものですぐ溺れてしまいそうになるので、今回は最近発売されたばかりのニューアルバムについて触れるに留めておく。留めておけるかな……。おけたらいいな……。 如何せん見切り発車なので……(……)


世界中が新型ウイルス感染の恐怖に渦巻く2020年4月6日、本人たち曰く「史上最悪のタイミング」にてLOSTAGEのニューアルバム『HARVEST』は発売された。通算8枚目の作品となる彼らのキャリア史上初、CDという実体のないデジタル・アルバムとしてリリースされた。私は偶然、本当にたまたま偶然、ボーカルの五味 (兄) さんが「リリースします」とツイッターで呟いた瞬間を目撃した (私が見た時点でツイートには「45秒前」 と表示されていた) (スクショしとけばよかった……)のだけれど、値段を幾ら払おうか考えるのに5日くらいかかり(※)、ようやっと購入したあとも聴くまでに3日くらい日を要した。(※今作品の定価は1500円だけれど、販売元であるBandcampの仕様上、それ以上の金額を払うこともできる)

詳細は割要するが、2,3年前から自分の中で意識的にLOSTAGEを遠ざけていた。 人生で最も執着している存在であったが、それゆえに、敢えて心の中から無理やり退かさないとうまく心のバランスが取れなくなってしまっていた (LOSTAGEに何かあったわけではなく、完全に自分自身の問題)。なので、LOSTAGEの音楽を、歌声を聴くのは、かなり久しぶりだった。1曲目を聴くのは特に緊張した。

もし、この作品が彼らの音楽に初めて触れることになるひとには、どんなふうに聴こえるんだろう。 澄んでややや高めのキーの歌声のおじさんが、まっすぐ飾り気のないことばを紡いでいるように聴こえるんだろうか。 声のやさしさは、音のあたたかさは、どう感じるのだろうか。

それなりの年月をかけてファンをやってきた。新規より古参のファンのほうが偉いだとかそういう考えは一切持っていないが、それはそれとして、長らくのファンだからこそ聴こえてくる音っていうのは、確かにあると思う。これはもう単純に知識量の問題で、彼らの「歴史」を知っているかどうかだと思う。歴史っていうとなんか重苦しいな。「歩み」と呼んでもいい。新規だろうが古参だろうが、知ってる人は知ってるし知らない人は知らない。そこに関心があるかどうか、それだけだ。私はたまたま、今となってはそう呼べるものたちを、リアルタイムで目の前で見てきた。だから知ってる。ただそれだけのこと。

上のほうでさらっと書いたけど、20年バンドをやるってただごとじゃない。存続の危機は何度もあったと思う。メンバーが変わり、所属レーベルが変わり、バンド名が変わり、それでもなお続けてきた。 少し触れただけで皮膚が切れて血が滲んでしまいそうな、ギラギラしてヒリついたナイフみたいな空気を纏っていた時代から、酸いも甘いも噛み分けて(酸いことのほうが格段に多かっただろう)、人生の節目をいくつも経験し、 今鳴らす音に昇華されている。同じバンドでありながら、もう全然違うバンドみたいになった。変わり続けていることが、昔から変わらない彼らの姿だと思う。


ようやっとHARVESTを聴いた。
1曲目、『かぎろひ』。初めて聴くのに懐かしい気持ちになった。ちょっと長めのイントロ、曇り空がだんだん晴れて日が差す景色が脳裏に浮かぶ。2曲目、『パルス』。声も音も言葉も柔らかくて優しい。コーラスはアチコさんかなあ。3曲目、『独楽」。イントロでなんとなくbloodthirsty butchersを彷彿した。オーオーオーオーで拳を突き上げたいな。ライブで聴きたいな。

聴くごとに胸の奥がぎゅうっとなって、3曲目でとうとう堪えきれずに目からこぼれた。こんなにもあたたかい、やさしい曲を。 まっすぐなことばを。あのLOSTAGEが。上流から何年も掛けて濾過された水が身体中に染み渡っていくみたいに、音が、声が、じんわりと沁みた。

7曲目の『HARVEST』、表題曲にして歌詞の中に「やすらぎ」と「これから」という言葉が入っているの気になったな。(やすらぎの道と、拓人さんのお店korekaraのこと……?)(他の人の感想とかー切何も見ずに書いてるので、公式見解がすでにされていたらめっちゃ恥ずかしい)私は6曲目のMESSAGEと9曲目の残像が特に好き。

得体のしれない新型ウイルスに世界中が侵され怯えるこのさなかに、この作品が世に放たれたこと。この曲たちを作った彼らがいること。音楽という手段があること。楽器があること。メンバーがいること。五体があって、動かせること。喉があって、声が出ること。心に意志があること。積み重なったひとつひとつが全部奇跡みたいに思えて、涙が出てしょうがなかった。


なかなか手を付けられなかったくせに、一旦聴き始めると永遠に聴き続けてしまっている。どうやってこの音楽を聴かずに今まで過ごせてこれたのか、どうしてそんな選択ができていたのか、もう忘れてしまった。

「今」、LOSTAGEを知っていること、好きでいることが、嬉しくて誇らしい。結局私は、これからも心を震わせて泣いたり、高揚してぶちあがったりして、己の日々に寄り添わせては勝手に傷付いたり勝手に救われたりしたいと思っている。LOSTAGEのある生活を送りたい。 LOSTAGEとともに生きたいのだ。

狭く天井の低いライブハウスで、拳を上げたり身体を揺らしたりしていたあの日々が、当たり前みたいにまたそこにありますように。そんな日が早く訪れますようにと願いながら、飽きもせずまた今日もHARVESTを聴いている。

 

 

あのリリースは史上最高のタイミングだったと、いつかの未来で言いたい。

 

lostage.bandcamp.com

 

hostage.hatenadiary.org

LOSTAGEニューアルバム 『HARVEST』 絶賛発売中です。Bandcampにて全曲フル試聴可能です。 何卒よろしくどうそ。